私は、2月2日付けの河北新報「持論時論」欄で「被災地復興を考え県立で」と訴えました。
しかし、その後の動きは、仙台と福島の私大グループの表明のみです。
宮城県村井知事からは「県立」の表明はなく、奨学金制度での対応しか語っていません。
当欄投稿で私が明らかにした如く、私立医科大学では奨学金制度をもってしても、被災地や過疎地の医療の根本的対策にはならないのは事実が示しています(資料1、2)。
私は、2月末に文部科学省の担当官を訪ね以下のことを確認してきました。
が明らかになりました。
この内容は、4月3日の衆議院東日本大震災復興特別委員会の審議でも確認されました。
つまり、もっと時間をかけて「被災地のため、遅れている東北地方全体の医療対策のため」にいかなる医学部構想がよいのか、どのような設立母体がよいのかなど、 広く県民の議論を県政のトップは呼びかけるべきでしょう。
それは、自らが35年間の医大新設ストップの厚き国の壁を破った責任としてもと思います。
この世論を呼び起こすきっかけになるようにと、宮城県医師会の会員の1/4を対象にアンケート調査を今年3月に行いました。
回答率は35%でした。
医師以外には、東北大学医学部の全教授と被災地中心に勤める保健師60名も含まれます。
回答270人中、医大新設に反対が147で賛成の112を上回りました。
しかし、反対する方の理由で多いのは、「医大を作っても被災地や、東北の過疎地にゆかない」から反対だとの意見が99件ありました。
これは「被災地や過疎地の受け入れ条件をつくれば必ずしも反対ではない」とも解釈でき「絶対反対」は少なくなり、この条件付き賛成を加えると78%と多数になります。
このアンケートで明らかになったのは、
以上結果からいえることは、医師会や、医学部関係者が「医大新設反対」と声明を発している中でも、現実は関係者の中でも十分な論議がされていないということです。
ここで、地域の受け皿をどのように作るのかが、地方自治体や私たち住民の課題でもあります。
この点からしても、東北地方及び宮城県内の地方の医師対策のための地域の受け皿を整備する責任が、県及び地方自治体に問われています。
つまり、そこまでを視野に入れた検討が「医大新設」の政策に求められているということです。
県当局の試算によれば、医学部建設費用(イニシアルコスト)に400~500億円(キャンパス+附属病院)とされます。
これは47年償却で年間10億円に相当します。
また年間の医学部運営費用(ランニングコスト)は60~70億円(ただし地方交付税措置で100人定員で10~20億円)とされています。
この試算からすれば、年間最低で40億円最大で70億円とされます。これは当県の年間予算の1%以内に十分収まります。
村井県知事が、震災復興期の大きな2つの課題の一つに「医学部新設」を掲げていることからすれば、県自身が本腰を入れて「県立医大」つくりに踏み込むべきではないでしょうか。
国は、復興予算を充てるのは知事の裁量範囲と述べています。
全国に県・市立医大は8大学あります。
うち当県より人口や財政力の4~6割で規模の小さい2県(奈良、和歌山)に県立医大があります。
隣の福島県は県立医大には、年間の運営費として70億円を助成していますが、県立医科大学があることによって、自県出身者への優先入学枠や、学資の優遇措置などを設けることによって、県立病院や地域の病院への医師配置を計画的に進めることを可能としています。
県 | 人口(千人) | 医大数 | 1医大当たり人口(千人) | 宮城県に新設医大1(人口千人) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
宮城県 | 2,348 | 国立 | 1 | 2.348 | 1,174 | ||
合計1 | |||||||
東北6県 | 9.337 | 国立 | 4 | 1,556 | 1.334 | ||
県立 | 1 | ||||||
市立 | 1 | ||||||
合計6 | |||||||
京都府 | 2,636 | 国立 | 1 | 1,318 | |||
府立 | 1 | ||||||
合計2 | |||||||
岡山県 | 1,945 | 国立 | 1 | 972 | |||
私立 | 1 | ||||||
合計2 | |||||||
奈良県 | 1,400 | 県立 | 1 | 1,400 | |||
合計1 | |||||||
和歌山県 | 1,002 | 県立 | 1 | 1,002 | |||
合計1 | |||||||
香川県 | 995 | 国立 | 1 | 995 | |||
合計1 | |||||||
鳥取県 | 588 | 国立 | 1 | 588 | |||
合計1 | |||||||
全国 | 128,057 | 合計79 | 1,620 | 1,600 |
医師会の反対理由には、今日の人口減少により将来の医師過剰があります。
医大新設申請の条件に「○年後に規模縮小計画」を盛り込むとあり、私大では対応が困難と思われます。
●6年間の必要最低の学費
岩手医大(私大)3,400万円>福島県立医大(非自県民)406.08万円>福島県立医大(自県民)355.7万円>東北大医学部(国立)349.68万円
岩手医科大学 | 福島県立医大 (福島県民) |
福島県立医大 (県民以外) |
東北大学 医学部 |
||||
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入学金 (入学年) |
21,750,000 | 817,800 | 1,381,800 | 282,000 | |||
年学費 | 1,895,000 | 446,500 | 446,500 | 535,800 | |||
6年間総額費 | 31,225,000 | 3,557,000 | 4,060,800 | 3,496,000 |
実施:2014年3月3日〜3月10日
回収:2014年4月1日現在
実施: 東北地方医療・福祉総合研究所
賛成 | 反対 | 意見無し | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
112人 | 147人 | 11人 | 270人 |
賛成 | 反対 | 意見無し | 合計 | |||||||
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県立 | 私立 | 国立 | 不明 | どれでも | 小計 | |||||
開業医 | 21 | 17 | 2 | 2 | 6 | 48 | 68 | 6 | 122 | |
勤務医 | 14 | 13 | 3 | — | 3 | 33 | 53 | 3 | 89 | |
教研 | 4 | 1 | — | — | — | 5 | 11 | — | 16 | |
勤務元 | 4 | 2 | — | — | — | 6 | 7 | — | 13 | |
開業医元 | 1 | 1 | 1 | — | — | 3 | — | — | 3 | |
教研元 | 1 | 1 | 1 | — | — | 3 | 6 | 1 | 10 | |
保健師 | 7 | 1 | — | — | — | 8 | — | — | 8 | |
保健師元 | 2 | 1 | 2 | — | 1 | 6 | 1 | — | 7 | |
不明 | — | — | — | — | — | — | 1 | 1 | 2 | |
合計 | 54 | 37 | 9 | 2 | 10 | 112 | 147 | 11 | 270 |
*宮城県医師会名簿から4人に一人あてにランダムに抽出、医学部教授は全員を対象とした。
*教研:東北大学医学部教授、教研元:元医学部教授
*保健師は、被災地沿岸部中心に60名に送付した。
理由 | 人数 | |
---|---|---|
被災地や東北地方の医師対策にならない |
99人 | |
すでに医学部定員を増やしているから |
77人 | |
将来の医師過剰が心配 |
49人 | |
現在の医師養成制度に懐疑的 |
36人 |