本論文は、東北地方医療・福祉総合研究所の助成企画です。
宮城県の総生産は、平成26(2014)年で、8兆8,958億円となり、東日本大震災前年の平成22(2010)年を上回るだけでなく、リーマンショックの前年・平成19(2007)年を上まわる成長となっています。
その成長率は、平成22(2010)年を100とすると、【表1-1】にみられるように、22〜26年の4年間で14%の高い伸びとなっています。
年 | 伸び率(%) | |
---|---|---|
2010 | 100.00 | |
2011 | 97.29 | |
2012 | 106.98 | |
2013 | 109.52 | 2014 | 114.01 |
平成22〜26年の伸びを、産業(県内総生産の約87%を占める)の項目別で、とりわけ変化の大きいものは【表1-2】のとおりです。
【1-2】平成22年度と26年度の比較(単位:億円)2010年 | 2014年 | 2014年-2010年 | 2014年/2010年(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
県内総生産 | 78,021 | 88,958 | 10,937 | 114.01 | |||||
産業小計 | 67,252 | 77,500 | 10,248 | 115.23 | |||||
農林水産業 | 1,171 | 960 | ▲ 211 | 81.98 | |||||
製造業 | 全体 | 10,642 | 11,616 | 974 | 109.15 | ||||
① 食料品 | 2,364 | 2,167 | ▲ 197 | 91.66 | |||||
② 電気機械 | 1,656 | 2,949 | 1,293 | 178.07 | |||||
建設業 | 4,364 | 11,808 | 7,444 | 270.57 | |||||
サービス業 | 15,413 | 16,893 | 1,480 | 109.60 |
平成22年度から平成26年度への約1兆1千億円の県内総生産の伸びは、主に建設業で7,444億円、製造業の「② 電気機械」で1,293億円の伸び、サービス業で1,480億円の伸びとなっています。
宮城県の総生産の高い伸びは、震災復興にともなう建設業の伸びが大きな比重を占めるとともに、トヨタ企業の誘致・生産開始などにともなう製造業の伸びを特徴としています。
その一方で、第一次産業【表1-3】は、この5年間で211億円減少し、大震災前年に比べて81.98%にとどまっています。第一次産業は、大震災の平成23(2011年は、961億円まで落ち込み(対前年比82.06%)ました。
その後、平成25年度に1,076億円まで回復しますが、平成26年度には960億円に減少、大震災前の水準より後退しています。
特徴として、農業生産の落ち込みが大きく影響しています。26年度/22年度で79.45%となっています。
製造業のなかの①食料品には【表1-2】、水産加工などが含まれます。
平成26年度では、震災前の水準より▲197億円91.66%にとどまっており、沿岸部の主力産業の復興が「道なかば」であることを示しています。
2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第一次計 | 1,171 | 961 | 1,096 | 1,076 | 960 | ||||||
農業 | 711 | 693 | 802 | 734 | 585 | ||||||
林業 | 36 | 26 | 27 | 31 | 35 | ||||||
水産業 | 423 | 241 | 246 | 310 | 339 |
県内各自治体ごとの総生産(名目)は、特長として、自治体間での格差が急速に広がっていることです。
【表1-4】は、2010-14年=大震災後の伸び率、2001年〜14年の市町村内総意生産の伸び率を比較したものです。
(*)は、津波被害のあった沿岸部の自治体です。
大震災後の<2010〜14年の総生産>では復興に伴う建設業の急増のなかで沿岸部の自治体が軒並み高い伸びとなっています。
また、内陸部の数自治体が高い伸びとなっています。沿岸部の自治体で、松島、女川が総生産で大きく落ち込んでいるのも特徴です。
<2001〜14年の総生産>では宮城県の総生産が101%と2001年水準を超えたところにあります。その主な押上げ要因が復興にともなう建設業の増大であることは 【表1-2】でみたとおりです。
【表1-4】を四つのグル―プに分けて、その特徴をみてみます。
なお、自治体別の特長は、「四、市町村内総生産の特徴について」で検討します。
ここには、仙台市をはじめ16自治体が入ります。
そのうち9自治体が沿岸部で、南三陸177%、山元173%など、震災復興に伴う建設業の急増ガ要因となっています。
内陸部では、涌谷166%、大衡156%、大崎146%などの自治体です。
19自治体が県平均以下の総生産の伸びとなっています。うち、内陸部が13自治体、沿岸部が6自治体です。
2010〜14年の総生産(宮城県114%の伸び)中で、沿岸部では、松島48%、女川71%、内陸部では、 柴田90%、大河原・栗原95%が大幅な減少となっています。
県平均101%を上回る自治体は、20自治体です。
11自治体が沿岸部、9自治体が内陸部となっています。
130%以上の伸びとなっている自治体が7自治体、沿岸部では、山元175%、南三陸158%、亘理147%です。
内陸部では、涌谷159&、大和147%、富谷144%、大衡139%です。
県平均以下の自治体は、15自治体です。
沿岸部では、塩釜84%、多賀城95%、松島94%、女川61%の4自治体です。
これらの自治体は、震災後の4年間の建設業の押し上げがあっても2001年比では総生産が落ち込んでいる地域です。
内陸部の美里83%、七ヶ宿87%、蔵王87%、栗原88%などでは、14年間で総生産が10%以上落ち込んでいる地域です。
第一次産業の衰退、東日本大震災の影響などによると思われます。
地域 | 2010年〜2014年 | 地域 | 2001年〜2014年 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
*南三陸 | 177 | *山元町 | 175 | |||
*山元町 | 173 | 涌谷町 | 159 | |||
涌谷町 | 166 | *南三陸 | 158 | |||
大衡村 | 156 | *亘理町 | 147 | |||
大崎市 | 146 | 大和町 | 147 | |||
*亘理町 | 144 | 富谷市 | 144 | |||
*東松島 | 144 | 大衡村 | 139 | |||
*七ヶ浜 | 140 | *東松島 | 129 | |||
大和町 | 133 | *名取市 | 121 | |||
*名取市 | 132 | 大郷町 | 118 | |||
大郷町 | 124 | *岩沼市 | 118 | |||
*石巻市 | 122 | 大崎市 | 113 | |||
*気仙沼 | 121 | *七ヶ浜 | 112 | |||
富谷市 | 116 | *仙台市 | 107 | |||
*仙台市 | 116 | *石巻市 | 107 | |||
色麻町 | 115 | 柴田町 | 104 | |||
宮城県 | 114 | *気仙沼 | 102 | |||
*岩沼市 | 113 | 角田市 | 102 | |||
蔵王町 | 111 | *利府町 | 102 | |||
川崎町 | 110 | 宮城県 | 101 | |||
七ヶ宿 | 109 | 登米市 | 101 | |||
*塩釜市 | 109 | 加美町 | 98 | |||
登米市 | 109 | 丸森町 | 97 | |||
村田町 | 108 | 色麻町 | 96 | |||
*多賀城 | 107 | 村田町 | 95 | |||
美里町 | 106 | *多賀城 | 95 | |||
丸森町 | 105 | *松島町 | 94 | |||
加美町 | 104 | 大河原 | 93 | |||
白石市 | 103 | 川崎町 | 92 | |||
角田市 | 103 | 白石市 | 92 | |||
*利府町 | 101 | 栗原市 | 88 | |||
栗原市 | 95 | 蔵王町 | 87 | |||
大河原 | 95 | 七ヶ宿 | 87 | |||
柴田町 | 90 | *塩釜市 | 84 | |||
*女川町 | 71 | 美里町 | 83 | |||
*松島町 | 48 | *女川町 | 61 |
総生産において、県内でも地域間の格差が広がっている状況(2014年現在)をみてきました。
建設業では、復興の重点時期や規模が自治体ごとに違うことから、建設業の生産額も変化します。
一方、製造業などでは、民間企業が沿岸部で再建をめざすのか、内陸部へ移転するのかなどで大きく変化します。
その際に、体力のある中堅・大企業は生産拠点の移動を早く決断していますが、体力のない中小零細企業は再建できないでいます。
大震災を挟んで、事業所とその従業員数がどう変化しているのかをみてゆきます 。
【表2-1】にみるように、宮城県の事業所数は、大震災前の2009年には111,343事業所あったのが、大震災後の2012年に98,190事業所に、実に12,153事業所が減少しました。
2014年までに約5,000の事業所が再開しましたが、事業所数は、103,505にとどまり、震災前と比べると、7,038事業所、7%の減少となっています。
従業者数では、2009年の1,032,237人に対して、大震災後の2012年に966,780人に、65,457人の従業者が減少、その後復興されたとはいえ、2014年では1,010,795人にとどまり、大震災前の2009年に比べて▲21,442人、2%の減少となっています。
参考ですが、2009-14年に減少した7,038事業所、従業者数21,442人から、事業所の規模を出すと、1事業所当たり3.0人の従業者となります。
2009年の従業者数/事業所数の平均が9.3人ですから、2014年時点で復興されていない事業所の多くが零細規模であることが推測できます
2009〜14年での変化を、仙台市、沿岸部、内陸部に分けてみると、変化の実態がよりリアルにみることができます。
仙台市は全体として事業所・従業者数ともに増えています。【表2-2】参照。
2009年比で、事業所で1,320事業所、2.6%増に、従業者数では15,170人、2.8%増です。
区ごとでは、若林区の減少が大きく、青葉区の増大が大きくなっています。
青葉区では、事業所数で8.2%増、従業者数で4.8%増となっていて、従業者数の伸び数/事業所数の伸び数=7.1人ですので、10人未満の事業所が多いと推測できます。
【表2-3】は、大震災での津波被害を受けた沿岸部の各自治体での事業所とその従業者数の復興状況(14年)を表にしたものです。
14自治体(仙台市除く)の合計で、7202事業所、33,105人の従業者が減少しています。その規模は、2,009年の沿岸部の31,197事業所の23%にあたります。
従業者数では、243,351人の13.6%にあたります。60%以上の事業所が減少した自治体は、南三陸町と女川町、約三分の一の事業所が再開されていないのが石巻市、気仙沼市、東松島町、山元町となっています。
塩釜地域の二市三町では、1,021事業所(09年の12.7%)、従業者数5,517人(同8.8%)の減少となっています。
この統計は、大震災から3年目の2014年の数値ですが、地域に事業所が再建され、働く場が戻ってくることが真の復興であり、地域の再建につながります。
2017年の現時点に至っても、相当の部分で復興されていないように思われます。
【表2-4】 は、内陸部の事業所と従業者の変化です。
この5年間で、津波被災があつた沿岸部ほどではないが、大衡村、大和町、富谷市以外の全ての自治体で事業所が減少しています。
そのうち10%以上の事業所が減った自治体が白石市、七ヶ宿町、加美町、涌谷町の4自治体、残りの13の自治体では7%以上の事業所が減少しています。
事業所の減少にともない、そこで働く従業者が減少しますが、500人以上の従業者が減った自治体は、大崎市(2,720人)、登米市(1,259人)、大河原市(1,135人)、柴田町(879人)、角田市(870人)、美里町(656人)、栗原市(585人)の7自治体です。
【表2-5】と【表2-6】 は、 事業所・従業者の増・減で、各自治体間での二極化が急激に進行している現状を示したものです。
事業所・従業者が集中している自治体は、仙台市の3つの区(青葉・太白・泉)と富谷、大和、大衡、名取、利府の5自治体。
事業所・従業者が減少している自治体は、仙台市の2つの区と県内29自治体です。
【表2-5】では、仙台市の5つの区を事業所増の区と減の区を分けています。
仙台市の2区(宮城野、若林)と県内29自治体では、9,006事業所、その従業者数47,399人の減少となっています。
その一方で、仙台市の3つの区(青葉、太白、泉)と5自治体(富谷、大和、大衡、名取、利府)に事業所が急激に集中しています。
【表2-6】は、県内の事業所とその従業者の構成比を、県内の6自治体と29自治体を比較した表です。このなかで明らかなことは、仙台市とその周辺5自治体に、事業所が集中し、一方で、過疎地域が広がっていることです。
2009年と2014年の5年間で、仙台市と5自治体の事業所は、51.8%から57.1%へ5.3%増え、従業者数でも59.0%から63.1%へ4.1%増えています。
大震災を挟んで急激な集中となっています。
年 | 増減数 | 増減比 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業所 | 2009 | 111,343 | 100% | |||
2012 | 98,190-12,153 | 88% | ||||
2014 | 103,505-7,038 | 93% | ||||
従業者 | 2009 | 1,032,237 | 100% | |||
2012 | 966,780-65,457 | 94% | ||||
2014 | 1,010,795-21,442 | 98% |
事業所数 | 従業者数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
仙台市 | 1,320 | 15,170 | |||
青葉区 | 1,661 | 11,481 | |||
宮城野区 | ▲162 | 414 | |||
若林区 | ▲416 | ▲2,602 | |||
太白区 | 208 | 4,729 | |||
泉区 | 20 | 1,148 |
事業所数 | 減少率 | 従業者数 | 減少率 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
石巻市 | ▲2,773 | 31 | ▲12,356 | 19 | |||||
気仙沼 | ▲1,471 | 33 | ▲7,850 | 26 | |||||
南三陸 | ▲547 | 63 | ▲2,414 | 43 | |||||
塩釜市 | ▲492 | 15 | ▲1,020 | 5 | |||||
東松島 | ▲452 | 27 | ▲1,578 | 14 | |||||
女川町 | ▲382 | 62 | ▲2,052 | 40 | |||||
多賀城 | ▲337 | 13 | ▲3,500 | 16 | |||||
岩沼市 | ▲156 | 8 | ▲1,351 | 7 | |||||
山元町 | ▲153 | 28 | ▲667 | 16 | |||||
亘理町 | ▲128 | 11 | ▲399 | 4 | |||||
七ヶ浜 | ▲124 | 22 | ▲465 | 16 | |||||
名取市 | ▲119 | 4 | 1,349 | 5 | |||||
松島町 | ▲81 | 12 | ▲819 | 16 | |||||
利府町 | 13 | 1 | 287 | 3 | |||||
小計 | ▲7,202 | ▲33,105 | |||||||
(若林) | ▲416 | ▲2,602 | |||||||
(宮城野) | ▲162 | 414 | |||||||
仙台沿岸部含 | ▲7,780 | ▲35,293 |
事業所数 | 減少率 | 従業者数 | 減少率 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
白石市 | ▲198 | ▲11 | 104 | 8 | |||||
角田市 | ▲124 | ▲9 | ▲870 | ▲6 | |||||
登米市 | ▲344 | ▲8 | ▲1259 | ▲4 | |||||
栗原市 | ▲278 | ▲8 | ▲585 | ▲2 | |||||
大崎市 | ▲427 | ▲7 | ▲2720 | ▲5 | |||||
蔵王町 | ▲59 | ▲9 | ▲296 | ▲6 | |||||
七が宿 | ▲14 | ▲14 | ▲35 | ▲7 | |||||
大河原 | ▲108 | ▲8 | ▲1135 | ▲11 | |||||
村田町 | ▲52 | ▲9 | ▲412 | ▲7 | |||||
柴田町 | ▲114 | ▲9 | ▲879 | ▲6 | |||||
川崎町 | ▲35 | ▲7 | 8 | 0.2 | |||||
丸森町 | ▲44 | ▲8 | ▲439 | ▲11 | |||||
大和町 | 33 | 3 | 2531 | 21 | |||||
大郷町 | ▲28 | ▲7 | ▲288 | ▲8 | |||||
富谷市 | 127 | 11 | 1696 | 15 | |||||
大衡村 | 25 | 9 | 2736 | 60 | |||||
色麻町 | ▲23 | ▲9 | ▲463 | ▲18 | |||||
加美町 | ▲137 | ▲11 | ▲358 | ▲4 | |||||
涌谷町 | ▲82 | ▲11 | ▲457 | ▲7 | |||||
美里町 | ▲74 | ▲7 | ▲656 | ▲7 | |||||
合計 | ▲1,956 | ▲3,777 |
事業所数 | 従業者数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
仙台3区、5自治体 (青葉・太白・泉、富谷、 大和、大衡、名取、利府) |
1,968 | 25,957 | |||
仙台2区、29自治体 | ▲9,006 | ▲47,399 |
2009年(構成比) | 2014年(構成比) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
宮城県 | 事業所数 | 111,343(100) | 103,505(100) | |||
従業者数 | 1,032,237(100) | 1,010,795(100) | ||||
仙台市と5自治体 (富谷、大和、大衡、名取、利府) |
事業所数 | 57,719(51.8%) | 59,118(57.1%) | |||
従業者数 | 609,357(59.0%) | 638,126(63.1%) | ||||
29自治体 | 事業所数 | 53,624(48.2%) | 44,387(42.9%) | |||
従業者数 | 422,880(41.0%) | 372,669(36.9%) |
県民所得は、1雇用者報酬、2財産所得、3企業所得の合計で示されます。
【表3-1】は、村井県政誕生の前年にあたる2004年(平成16年)、東日本大震災の前年2010年(平成22年)、宮城県・市町村の統計が出されている2014年(平成26年)を軸に、県民所得がどう変化しているかを示したものです。
この表は、宮城県「県民所得および県民可処分所得の分配」によったものです。
この表からわかることは、
以上のように、2004年〜14年の10年間は、県民所得は106%に伸びてはいるが、その主要因は、企業所得の急激な伸びであって、雇用者報酬は、3,462億円も減少していることです。
宮城県の同統計には、関連指標として「所得水準に関するもの」が掲載されています。
【表3-2】は、所得水準に関する4つの指標を年度別に比較したものです。
「県民一人当たり所得」は、2014年度で2,807千円です。
10年間の推移をみると、2004〜10年の6年間で、▲223千円・7%減少し、大震災後の2010〜14年の4年間で369千円15%の高い伸びとなっています。
自治体別の統計には、「(参考)一人当たりの市町村民所得」が毎年掲載されています。県内の自治体の中でもっとも高いのが大衡村で、2014年度には、4,053千円です。
県民一人当たりの可処分所得は、「県民(企業含む)が実際に使用可能な所得」(県、用語説明)のことで、aの「県民一人当たり所得」と同傾向を示しています。2004〜14年で112%の伸びとなっています。
「県民一人当たり所得」は、2014年度で2,807千円です。
10年間の推移をみると、2004〜10年の6年間で、▲223千円・7%減少し、大震災後の2010〜14年の4年間で369千円15%の高い伸びとなっています。
自治体別の統計には、「(参考)一人当たりの市町村民所得」が毎年掲載されています。県内の自治体の中でもっとも高いのが大衡村で、2014年度には、4,053千円です。
2004年 | 2010年 | 2014年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
県民所得 (1+2+3) |
6,178,783 | 5,725,224 | 6,534,558 | |||
100% | 93% | 106% | ||||
100% | 114% | |||||
1、雇用者報酬 | 4,428,988 | 4,061,894 | 4,082,781 | |||
100% | 92% | 92% | ||||
100% | 101% | |||||
2、財産所得 | 325,337 | 330,077 | 391,675 | |||
100% | 101% | 120% | ||||
100% | 119% | |||||
3、企業所得 | 1,424,458 | 1,333,253 | 2,060,102 | |||
100% | 94% | 145% | ||||
100% | 155% |
2004年 | 2010年 | 2014年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
県民所得 (県民一人当たり) |
2,661 | 2,438 | 2,807 | |||
100% | 93% | 108% | ||||
100% | 115% | |||||
県民可処分所得 (県民一人当たり) |
3,378 | 3,317 | 3,781 | |||
100% | 98% | 112% | ||||
100% | 114% | |||||
家計最終消費支出 (県民一人当たり) |
2,129 | 2,123 | 2,196 | |||
100% | 100% | 103% | ||||
100% | 103% | |||||
県民雇用者報酬 (雇用者一人当たり) |
4,557 | 4,251 | 4,370 | |||
100% | 93% | 96% | ||||
100% | 103% |
2010 | 2014 | 伸び率 | ||
---|---|---|---|---|
県民総生産(億円) | 78,021 | 88,958 | 114% | |
県民所得(億円) | 57,252 | 65,346 | 114% | |
うち企業所得 | 13,333 | 20,601 | 155% | |
県民一人当たり 家計最終消費支出(千円) |
2,123 | 2,196 | 103% | |
雇用者一人当たり 報酬(千円) |
4,251 | 4,370 | 103% |
2004〜14年の10年間では、4,557千円から4,370千円に、雇用者一人当たりの報酬が18万7千円で96%減少しています。
2004〜10年の6年間で30万6千円減少(93%)。大震災後の復興需要、企業誘致などでの経済成長のなかでも、雇用者報酬は低く抑えられています。
その結果、村井知事時代前の2004年の賃金水準を回復できないでいます。
【表3-3】は、大震災後の宮城県での総生産、県民所得の伸びと家計、雇用者の所得を対比した表です。
県内総生産と県民所得は、114%を示しています。
県民所得が、2010-14年で8,094億円増えていますが、そのうち7,268億円が企業所得です。
その結果、雇用者一人当たり報酬は103%の伸びにとどまっています。
【表3-4】は、大衡村の「一人当たり村民所得」を04年、10年、14年で、その変化と構成を検討したものです。
大衡村の村民所得は、2004年の16,802百万円が2014年には22,732百万円に、5,930百万円増え、135%もの高い伸びを示しています。
大震災後のトヨタとその関連事業所などの操業によるものとして、村井県政の「富県戦略」の「成功」の象徴となっています。
村民所得59億円増の内分けをみると、雇用者報酬の増が約10億円、財産所得の増が約4億円で、企業所得が約45億円増となっています。
村民所得増59億円の76%が企業所得の増です。
雇用者報酬は、2004〜14年の10年間で110%の伸びに対して、財産所得は146%、企業所得は169%と急成長となっています。
大衡村が県内1高い「一人当たり村民所得」だといっても、企業所得を含めた「村民所得」の増大をもって村民の所得が増え、暮らしが良くなる指標として見ることはできません。
各自治体の統計に「就業者数」が(参考)として掲載されています。
「就業者数」とは、【表3-5】にあるように、無給の家族従業者を含む「あらゆる生産活動に従事するもの」と規定されています。
この「就業者数」に対応する直接入る所得としては、「雇用者報酬」と「個人企業所得」(農業、その他の産業、持ち家)の合計と比較し、変化をみることが、より実態を反映できると思います。
(就業者一人当たり所得の算出方法がわからないので、「雇用者報酬」と「個人企業所得」を加えた値を就業者数で割ることにしました。
このやり方は、まったくの個人的発想ですので公的には通用しないかもしれません。
ただ、同じ指数で年度間の比較をする分には構わないと思います)
大衡村の「就業者一人当たりの所得」として表にしたのが、【表3-6】です。
「就業者一人当たりの所得」(推計)で変化をみると、2004〜14年の10年間での就業者の所得は、約111億円から118億円に106%の伸びとなっています。
就業者数が5,020人から6,332人に1,312人・126%と増えていることから、一人当たりの所得は、2,216千円から1,865千円に351千円減少します。
2010〜14年の時期はトヨタが操業を開始する時期で、宮城県全体でも建設業での復興バブルともいえる時期です。
2010年に就業者一人当たりの所得は1,907千円に対して2014年のそれは、1,865千円と4万2千円減98%となっています。
2004年 | 2010年 | 2014年 | ||||
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村民所得 | 16,802 | 13,133 | 22,732 | |||
100% | 78% | 135% | ||||
100% | 115% | |||||
雇用者報酬 | 9,329 | 7,786 | 10,300 | |||
100% | 83% | 110% | ||||
財産所得 | 821 | 852 | 1,202 | |||
100% | 104% | 146% | ||||
企業所得 | 6,652 | 4,495 | 11,230 | |||
100% | 68% | 169% | ||||
村民一人当たり 千円) |
2,943 | 2,462 | 4,053 | |||
100% | 84% | 138% |
就業者は、「あらゆる生産活動に従事するものをいい、 無休の家族従事者を含む」。 |
雇用者は、「あらゆる生産活動に従事するもの」のうち、 個人業主と無休の家族従事者を除くすべての者」であり。 法人企業の役員、特別職の公務員、議員等も含まれる。 |
単位 | 2004年 | 2010年 | 2014年 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
雇用者報酬 | (百万円) | 9,329 | 7,786 | 10,300 | |||||
個人企業 | (百万円) | 1,794 | 1,678 | 1,511 | |||||
合計 a | (百万円) | 11,123 | 9,464 | 11,811 | |||||
(%) | 100% | 85% | 106% | ||||||
就業者数b | (人) | 5,020 | 4,963 | 6,332 | |||||
一人当り所得 | (千円) | 2,216 | 1,907 | 1,865 | |||||
(%) | 100% | 86% | 84% |
a 県(村)民所得 | b うち企業所得 | b/a構成比 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
宮城県 | 6,534,558 | 2,060,102 | 31.5% | ||||
大衡村 | 22,732 | 11,230 | 49.4% |
【表3-7】は、県(村)民所得における企業所得の比率を、宮城県(平均)と大衡村を比較した表です。
宮城県全体での、県民所得に占める企業所得の比率は、31.5%です。
大衡村での村民所得に占める企業所得は49.4%で、企業所得の比率が飛びぬけて高いことを示しています。
以上、「県内1所得の高い大衡村」の現実は、49%を超える企業所得が作り出したものであること、「一人当たり就業者数」(推計)で比較すると、下がっています。
なお、「市町村民所得」では、2014年度から「参考」として、人口と就業者数が掲載されました。
大衡村の統計では、2014年度は、「人口」5,608人に対して、「就業者数」6,332人と記載されています。
「一(3)広がる地域間格差」で、県内の自治体を四つのグループに分けて、その特徴についてみてみましたが、ここでは、自治体別に、特徴をみてみます。
この群には、仙台市をはじめ16自治体が入ります。
そのうち9自治体が沿岸部で、南三陸177%、山元173%など、震災復興に伴う建設業の急増ガ要因となっています。
内陸部では、涌谷166%、大衡156%、大崎146%などの自治体です。
南三陸町は、県内で最も高い伸びですが、その特徴は、建設業が859%になっているからです。
10年の建設業が49億円だったのが、14年には422億円になっています。
10年の総生産が421億円ですから復興需要が終わり、建設業が元に戻ると、総生産は2010年より下回ります。
山元町も南三陸町と同じ傾向になっています。
山元町の総生産は10年が400億円、14年が683億円です。
建設業は、10年が約30億円だったのが、14年に356億円となりました。
復興需要が終わると、総生産が復興前より10%前後下回ります。
水産業、製造業の復興が重要な課題となりますが、2014年度では、2010年比で50%、67%にとどまっています。
内陸部の自治体で、大震災後に総生産を急激に増やした自治体の一つです。
涌谷町は、大震災前の町内総生産が約475億円。うち製造業が153億円でした。
2014年の総生産が800億円に急増、製造業が424億円と277%の伸びとなっています。
大衡村では、製造業の高い伸びが特徴となっています。
大衡村の2010年の総生産は340億円でしたが、2011年の製造業が前年より293億円増えています。
トヨタの生産が始まったことが要因となっています。
内陸部で製造業の生産が高い伸びとなっています。
10年比で14年には、625%となっています。
(292億円から1824億円)農業生産が、10年比で74%となっています。
2010〜14年の変化で高い伸びとなっている七ヶ浜町の特徴は、この時点では、第一次産業の生産が震災前の77%に留まっている点、建設業が2014年度は震災前の5倍となっています。
19自治体が県平均以下の総生産の伸びとなっています。うち、内陸部が13自治体、沿岸部が6自治体です。
2010〜14年の総生産(宮城県114%の伸び)中で、沿岸部では、松島48%、女川71%、内陸部では、柴田90%、大河原・栗原95%が大幅な減少となっています。
沿岸部で総生産が急激に減った松島町の特徴は、松島町にあった (株)東京エレクトロンが移転したことです。
松島町の製造業の生産額は2010年の703億円から11億円(2014年)に激減しました。
観光業の指標となるサービス業は107億円かせ102億円に95%となっています。
水産業、製造業(主に水産加工)が7割台まで復興してきました。
電気・ガスは、女川原発の停止。
10年の電気ガスは374億円で女川の総生産707億円の53%を占めていました。
農業が14年度に10%減少。
製造業は2010年に562億円(町内総生産の39%)だったのが、2014年には372億円(同上28%)に大幅な減少となっています。
経済全体では2010年をピークに減少傾向です。
大震災後、地域経済が縮小傾向となっています。
01年から10年間で7%減少し、10年から4年間で5%の減少となっています。
農業は、2001年には133億円だったのが、10年には78億円(01年比で59%)、14年には71億円(同上53%)と半減しています。
大震災後の製造業も4年間で75%に減少しています。
(生産額で412億円から308億円に)
県平均101%を上回る自治体は、20自治体です。
11自治体が沿岸部、9自治体が内陸部となっています。
130%以上の伸びとなっている自治体が7自治体、沿岸部では、山元175%、南三陸158%、亘理147%です。
内陸部では、涌谷159&、大和147%、富谷144%、大衡139%です。
2001年の総生産741億円に対して、2014年は、1,088億円と、147%の伸びです。
大震災後の特徴は、建設業が8倍となっているのが第一。
そして、水産業、製造業が震災前の水準を超えています。
2001年の総生産が1,018億円、震災前の10年が1,125億円で111%の伸び、14年には147%です。
大震災後の特徴は、一次産業の減少と製造業の高い伸び、サービス業の持続的な伸びが特徴。製造業の総生産は、2001年時点で308億円、2010年には339億円だったのが、2014年に623億円と大震災後に284億円の急増となっています。
人口も10年24,894人から14年27,513人111%(2,619人)の伸びとなっています。
富谷市は2001〜14年で総生産が県内一伸びた自治体。
産業では、林業が盛んであったが、人口増と宅地造成で衰退。
大震災後も人口が毎年1,000人規模で増え続けています。
産業では、卸売・小売、不動産業、サービス業が急成長しています。
総生産 | 水産業 | 製造業 | 建設業 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | |||||
2011 | 76 | 24 | 55 | 214 | |||||
2012 | 95 | 63 | 68 | 301 | |||||
2013 | 116 | 69 | 114 | 413 | |||||
2014 | 177 | 173 | 185 | 859 |
総生産 | 水産業 | 製造業 | 建設業 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | |||||
2011 | 86 | 48 | 52 | 294 | |||||
2012 | 110 | 26 | 69 | 491 | |||||
2013 | 149 | 28 | 78 | 921 | |||||
2014 | 173 | 50 | 67 | 1,190 |
総生産 | 農業 | 製造業 | 建設業 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | |||||
2011 | 110 | 95 | 122 | 190 | |||||
2012 | 138 | 113 | 172 | 420 | |||||
2013 | 134 | 111 | 171 | 290 | |||||
2014 | 166 | 91 | 277 | 269 |
総生産 | 農業 | 製造業 | 建設業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 195 | 110 | 303 | 127 | 2012 | 136 | 128 | 138 | 141 | 2013 | 150 | 123 | 198 | 72 | 2014 | 156 | 97 | 204 | 90 |
---|
総生産 | 農業 | 製造業 | 建設業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 123 | 103 | 331 | 165 | 2012 | 132 | 118 | 350 | 177 | 2013 | 140 | 101 | 535 | 157 | 2014 | 146 | 74 | 625 | 139 |
---|
総生産 | 第一次産業 | 建設業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 83 | 63 | 171 | 2012 | 136 | 34 | 431 | 2013 | 136 | 66 | 310 | 2014 | 140 | 77 | 532 |
---|
総生産 | 製造業 | 建設業 | サービス業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 33 | 1 | 146 | 86 | 2012 | 44 | 2 | 354 | 94 | 2013 | 44 | 2 | 325 | 93 | 2014 | 48 | 2 | 468 | 95 |
---|
総生産 | 水産業 | 製造業 | 建設業 | 電気ガス | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 31 | 31 | 61 | 163 | 0 | 2012 | 52 | 43 | 37 | 647 | 0 | 2013 | 53 | 73 | 62 | 576 | 1 | 2014 | 72 | 76 | 73 | 1004 | 1 |
---|
総生産 | 農業 | 製造業 | 建設業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 92 | 107 | 80 | 120 | 2012 | 96 | 111 | 87 | 113 | 2013 | 83 | 107 | 51 | 125 | 2014 | 90 | 88 | 66 | 160 |
---|
総生産 | 農業 | 総生産 | 農業 | 製造業 | 建設業 | 2001 | 100 | 100 | 2010 | 93 | 59 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 95 | 102 | 102 | 113 | 98 | 2012 | 91 | 98 | 121 | 83 | 80 | 2013 | 90 | 96 | 115 | 74 | 87 | 2014 | 88 | 53 | 95 | 91 | 75 | 81 |
---|
総生産 | 農業 | 水産業 | 製造業 | 建設業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 100 | 56 | 56 | 123 | 219 | 2012 | 120 | 65 | 27 | 129 | 407 | 2013 | 135 | 61 | 53 | 120 | 645 | 2014 | 144 | 54 | 104 | 109 | 814 |
---|
総生産 | 第一次産業 | 製造業 | 建設業 | サービス業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 100 | 112 | 110 | 68 | 92 | 2012 | 111 | 123 | 135 | 57 | 102 | 2013 | 109 | 107 | 113 | 76 | 105 | 2014 | 133 | 78 | 184 | 90 | 109 |
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総生産 | 第一次産業 | 卸売・小売業 | 不動産業 | サービス業 | 人口(人) | 人口増加率 | 2001 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 36,573 | 100 | 2010 | 123 | 63 | 132 | 139 | 173 | 47,042 | 129 | 2011 | 128 | 83 | 140 | 146 | 188 | 48,269 | 132 | 2012 | 143 | 89 | 142 | 150 | 194 | 49,072 | 134 | 2013 | 140 | 80 | 145 | 154 | 196 | 50,138 | 137 | 2014 | 144 | 64 | 144 | 148 | 200 | 50,900 | 139 |
---|
県平均以下の自治体は、15自治体です。
沿岸部では、塩釜84%、多賀城95%、松島94%、女川61%の4自治体です。
これらの自治体は、震災後の4年間の建設業の押し上げがあっても2001年比では総生産が落ち込んでいる地域です。
内陸部の美里83%、七ヶ宿87%、蔵王87%、栗原88%などでは、13年間で総生産が10%以上落ち込んでいる地域です。
第一次産業の衰退、東日本大震災の影響などによると思われます。
なお、女川【表4-8】、松島【表4-7】、栗原【表4-10】は、前項でみたとおりです。
製造業の総生産は、01年を100としてみると、10年までに74%で、大震災後、14年に38%まで減少しています。
ソニーの撤退、大震災後の工場の内陸部への移転など影響しています。建設業は、14年度は10年比で541%となっています。
14年度の総生産が1,841億円で建設業が328(10年が61)億円です。
復興にともなう建設需要が元に戻ることを想定すると、総生産は1,574億円となり、01年の1,946億円の81%と推定することになります。
こうした状況は、01年比で、電気・ガス66%、卸売・小売業73%、サービス90%など他産業にも影響を与えています。
塩釜市の総生産は、2001年を100とした場合、10年までに75と大きく落ち込みました。
金額にすると、2001年の1,904億円が2010年には1,435億円に469億円の減少です。
そして大震災でさらに落ち込むという二重の深刻さが重なっています。
内容で見ても、地域経済を支えてきた地場産業が2001年比で、水産業44%、製造業(水産加工業)72%、卸売・小売業56%と、大きく後退しています。
14年度の総生産が1,609億円で建設業が263(10年が66)億円です。
復興にともなう建設需要が元に戻ることを想定し14年度の総生産を1412億円と想定しますと、01年の1,923億円の73%となります。
こうした地域経済状況のなかで、他産業も、14年度の総生産は01年に比較して、電気・ガス・水道64%、金融・保険46%、不動産96%、運輸96%、情報通信79%、サービス76%と建設業を除く全産業が大幅に後退しています。
【表4-16】は、塩釜市の人口の変化です。
2001〜10年の9年間に4651人・7.61%の減少、2010〜14年の4年間に1887人・3.34%の減少となっています。
総生産 | 製造業 | 総生産 | 製造業 | 建設業 | 2001 | 100 | 100 | 2010 | 88 | 74 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 86 | 56 | 97 | 76 | 248 | 2012 | 94 | 33 | 106 | 44 | 471 | 2013 | 86 | 24 | 98 | 32 | 317 | 2014 | 95 | 38 | 107 | 51 | 541 |
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総生産 | 製造業 | 卸売・小売業 | 水産業 | 総生産 | 製造業 | 建設業 | 卸売・小売業 | 2001 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2010 | 75 | 76 | 62 | 55 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 71 | 73 | 51 | 34 | 94 | 96 | 125 | 72 | 2012 | 86 | 90 | 53 | 48 | 108 | 118 | 219 | 87 | 2013 | 78 | 57 | 57 | 31 | 104 | 75 | 243 | 92 | 2014 | 84 | 72 | 56 | 44 | 109 | 94 | 401 | 90 |
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全人口(人) | 2001年比 | 2010年比 | 2001 | 61,141 | 100 | 2010 | 56,490 | 92 | 100 | 2011 | 55,828 | 91 | 99 | 2012 | 55,177 | 90 | 98 | 2013 | 54,858 | 90 | 97 | 2014 | 54,603 | 89 | 97 |
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2001〜10年で総生産が90%に10%減少。
主に第一次産業、製造業の減少が影響。
大震災後は総生産を維持していますが、建設業が2010〜14年で195%と倍化していることが支えとなっています。
製造業は、2001年が260億円、2010年が248億円、2014年が190億円と推移し、大震災後58億円の減少(77%)となっています。
2010年の総生産が01年比で84%、金額で、2522億円(2001年)から2,124億円(2010年)へ398億円の減少のなかで大震災となりました。
水産業は半減していました。
大震災後の状況では、製造業が、2014年の時点でも、10年比で53%と半減している状況で、気仙沼の地場産業の柱であった水産業、水産加工業が深刻な実態となっていることを示しています。
2014年の総生産が、2010年、2001年を超えていますが、復興に伴う建設需要の増大によるものです。
2014年度の総生産が2570億円で、うち建設業が896(10年が137)億円です。
復興にともなう建設バブルが元に戻ることを想定し14年度の総生産を1801億円と想定しますと、01年総生産2,522億円の71%、10年総生産2,124億円の85%となります。
人口は、平成22年73,489人から2014年66,210人へ、▲7,279人、90%へ減少しています。地場産業の長期の衰退、大震災からの復興の顕著な遅れは、地域の他産業にも影響します。
14年度の総生産は01年に比較して、電気・ガス・水道68%、卸売・小売業57%、金融・保険69%、不動産79%、運輸90%、情報通信71%、サービス70%と建設業を除く全産業が大幅に後退しています。
総生産 | 第一次産業 | 製造業 | 総生産 | 建設業 | 2001 | 100 | 100 | 100 | 2010 | 90 | 84 | 95 | 100 | 100 | 2011 | 86 | 97 | 73 | 96 | 158 | 2012 | 83 | 105 | 36 | 92 | 173 | 2013 | 89 | 82 | 60 | 99 | 152 | 2014 | 92 | 76 | 73 | 103 | 195 |
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総生産 | 水産業 | 製造業 | 建設業 | 製造業 | 2001 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2010 | 84 | 49 | 91 | 91 | 100 | 2011 | 67 | 38 | 39 | 169 | 43 | 2012 | 75 | 41 | 42 | 194 | 46 | 2013 | 86 | 43 | 46 | 274 | 50 | 2014 | 102 | 44 | 48 | 595 | 53 |
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石巻市は、2001〜10年の9年間に総生産が86%(金額で5,504億円から4,803億円に701億円の減少)に後退する中で大震災の被害をうけました。
大震災後の復興状況では、水産業80%、製造業86%、卸売・小売業90%です。
2014年の総生産は、対10年比で122%となり、対01年比でも107%となっていますが、震災復興の建設需要による押し上げです。
建設業は、2010年295億円だったのが、14年には1,772億円となり6倍化しています。
市内総生産が10年比で4,803億円から、14年5,883億円に、1,080億円伸びていますが、建設業だけで1,477億円の伸びとなっています。
復興にともなう建設バブルが元に戻ることを想定し14年度の総生産を4,406億円と想定しますと、01年総生産5,504億円の80%、10年総生産4,803億円の92%となります。
人口は、2010年160,826人から2014年146,906人へ、▲13,927人、91%へ減少しています。
地場産業の長期の衰退、大震災からの復興の顕著な遅れは、地域の他産業にも影響します。
14年度の総生産は01年に比較して、電気・ガス・水道75%、卸売・小売業72%、金融・保険57%、不動産84%、運輸101%、情報通信84%、サービス80%と建設業、運輸業を除く産業が大幅に後退しています。
総生産 | 水産業 | 製造業 | 総生産 | 水産業 | 製造業 | 建設業 | 卸売・小売業 | 2001 | 100 | 100 | 100 | 2010 | 86 | 96 | 90 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 72 | 55 | 35 | 83 | 57 | 39 | 209 | 95 | 2012 | 96 | 53 | 43 | 111 | 55 | 47 | 480 | 100 | 2013 | 104 | 71 | 67 | 121 | 74 | 74 | 481 | 106 | 2014 | 107 | 77 | 77 | 122 | 80 | 86 | 601 | 90 |
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仙台市の総生産【表4-20】は、2014年で4兆9,168億円で、宮城県の県内総生産8兆5,450億円の55%を占めます。
仙台市の総生産は、01年から10年にかけて減少傾向でしたが、大震災を起点に増加傾向に転じています。
その内容を、産業別に見たのが【表4-21】です。
2014年では、農業、製造業が後退し、建設業、不動産業、サービス業の生産が伸びています。
2010年比で2014年の総生産が6,612億円増えていますが、そのうち、建設業で3,652億円、不動産業で666億円、サービス業で1,553億円の増となっています。
建設業とサービス業で5,000億円を超える押上げとなっています。
年 | 金額(億円) | 2001年比 | 2001 | 46,162 | 100 | 2009 | 41881 | 93 | 2010 | 42,556 | 95 | 2011 | 42,780 | 95 | 2012 | 46,992 | 103 | 2013 | 48,652 | 106 | 2014 | 49,168 | 107 |
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総生産 | 農業 | 製造業 | 建設業 | 卸売・小売業 | 不動産業 | サービス業 | 2010 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2011 | 100 | 74 | 52 | 164 | 103 | 102 | 104 | 2012 | 109 | 79 | 84 | 269 | 100 | 106 | 108 | 2013 | 112 | 81 | 91 | 290 | 106 | 108 | 111 | 2014 | 116 | 83 | 97 | 286 | 102 | 111 | 115 |
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利府町の総生産は、2001年が845億円で2014年に、対01年比で102%です。
そのなかで、卸売・小売業が88%に、サービス業が112%に変化しています。
総生産 | 卸売・小売業 | サービス業 | 第一次産業 | 製造業 | 2001 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 2010 | 101 | 81 | 88 | 66 | 112 | 2014 | 102 | 88 | 112 | 38 | 101 |
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2市3町(塩釜、多賀城、松島、利府、七ヶ浜)は、1980年代までは、塩釜市中心とした経済圏を形成していました。
利府ジャスコの出店を契機に様相が大きく変化してきました。
1998年の利府ジャスコ(当時、東北一の規模)の出店は、近隣市町を含め地域経済の様相を大きく変えました。
【表4-23】でみると、1997年〜2001年で、利府町の総生産が43億円増加し、塩釜▲33億円、多賀城▲8億円、松島▲4億円となっています。
その後、
①塩釜市の衰退が急速にすすむ。2001〜14年で56%に。②2市3町の卸売・小売の総生産の合計で、2001〜14年で67%(▲195億円)に減少しています。
③利府町での総生産も2001年をピークに10%を超える減少となっています。
いま、「東北一のイオンタウン」の計画が利府町内ですすめられていますが、地域の商店街の存続、高齢化の中での「買い物難民」の広がりなど、「住みよい街づくり」の視点から注視しなければならない課題です。
1997年 | 2001年 | 2010年 | 2014年 | 塩釜市 | 27,744 | 24,407 | 15,035 | 13,568 | 100 | 88 | 100 | 62 | 56 | 多賀城市 | 21,366 | 20,537 | 15,249 | 14,921 | 100 | 96 | 100 | 74 | 73 | 松島町 | 3,001 | 2,545 | 1,761 | 1,875 | 100 | 85 | 利府町 | 5,969 | 10,233 | 8,333 | 8,986 | 100 | 171 | 100 | 81 | 88 | 七ヶ浜町 | 2,596 | 2,327 | 1,711 | 1,158 | 100 | 90 | 100 | 74 | 50 | 合計 | 60,676 | 60,049 | 42,089 | 40,508 | 100 | 70 | 67 |
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今年4月に、2015年度の県内総生産の「速報値」が発表されました。
【表5-1】がその概要です。
大震災後の県内総生産の速報値は、本レポート[一]で分析した諸特徴の延長戦上に位置しています。
2010〜15年の総生産の伸び率は、115.6%です。
15年度「速報値」で特徴的な点は、大震災後成長してきた製造業が前年比で▲707億円となったことです、『河北』では「原油価格の下落」(4/4)が要因としています。
震災前の2010年度と比較してみると、総額で1兆2,178億円の増ですが、うち8409億円が建設業の増加分です。
復興需要での建設業の高い伸び率が総生産全体を引き上げていることが、2014年度より鮮明になっています。
合せて、サービス業1972億円の増、卸売・小売725億円の増、運輸705億円の増、製造業267億円の増など、震災前を総生産で超える業種が広がってきていることも特徴といえます。
2015年の「速報値」で重要な特徴の一つは、「第一次産業が10.6%増で3年ぶりに増加した」(同上)ことです。
「漁港の復旧による水揚げ量の増加により、水産業が18.9%増。農業は農産物の価格上昇で6.2%の増」(同上)としています。
農業は震災前の87%、水産業は95%となっています。
2010(A) | 2014(B) | 2015(C) | (C)-(A) | ||||||
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農林水産業 | 全体 | 1,171 | 960 | 1,063 | ▲108 | ||||
うち農業 | 711 | 585 | 621 | ▲90 | |||||
うち水産業 | 423 | 339 | 403 | ▲20 | 製造業 | 10,642 | 11,616 | 10,909 | 267 | 建設業 | 4,364 | 11,808 | 12,773 | 8,409 | 卸売・小売 | 10,602 | 11,572 | 11,327 | 725 | 運輸 | 3,750 | 4,385 | 4,455 | 705 | サービス | 15,413 | 16,893 | 17,385 | 1,972 | 県内総生産 | 78,021 | 88,958 | 90,199 | 12,178 |
『河北新報』(2017.4.4)報道では、「県民所得は、1.6%増の6兆6,401億円で4年連続のプラス。
1人当たりの県民所得は1.3%増の284万5000円だった」と報じています。
2015年の県民所得(速報値)【表5-2】の特徴としては、「三、県民所得の動向について」で分析した内容の延長線上に位置しています。
2014年度に比べても、県民所得に占める企業所得の比率がさらに高くなっています。
【表5-3】は、【表3-1】を「速報値」に合わせて作成したものです。
この表からわかることは、県民所得が2010〜15年に高い伸び(116%)を示しても、雇用報酬はほぼ横ばい(101%)で、企業所得だけが高い伸びとなっていることです。
2010(A) | 2014(B) | 2015(C) | (C)-(B) | ① 県民雇用者報酬 | 40,618 | 40,827 | 41,191 | 364 | ② 財産所得 | 3,300 | 3,916 | 4,173 | 256 |
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③ 企業所得 | 全体 | 13,332 | 20,601 | 21,036 | 435 | ||||
民間法人企業 | 5,418 | 13,541 | 13,806 | 265 | |||||
公的企業 | 545 | 474 | 541 | 67 | |||||
個人企業 | 7,368 | 6,585 | 6,687 | 102 | 県民所得 ① + ② + ③ | 57,252 | 65,345 | 66,401 | 1,056 |
2010年 | 2014年 | 2015年 [速報値] | 県民所得 ① + ② + ③ | 5,725,224 | 6,534,558 | 6.640.105 | 100 | 114 | 116 | ① 雇用者報酬 | 4,061,894 | 4,082,781 | 4.119.119 | 100 | 101 | 101 | (構成比) | 70.94% | 62.47% | 62.03% | ② 財産所得 | 330,077 | 391,675 | 417.370 | 100 | 119 | 126 | (構成比) | 5.76% | 5.99% | 6.28% | ③ 企業所得 | 1,333,253 | 2,060,102 | 2.103.615 | 100 | 155 | 158 | (構成比) | 23.28% | 31.52% | 31.68% |
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県民所得の分析は、2011〜15年の5年間だけをとってみても、県の復興事業が、大手ゼネコンを中心とする一部大企業の利潤獲得に最大限貢献するものであったことが、今回のレポートでも、部分的ではありますが、明らかにすることができたのではないかと思います。
【表5-3】にみられるように、県民所得に占める企業所得の構成比率は、2010年では23.28%でした。
2000年代の10年間はほぼこの水準でした。
ところが、大震災後の復興のなかで、企業所得が30%台にハネ上がっています。
ここには、建設業関連での大手ゼネコンのボロモウケの姿が現れているのではないでしょうか。
「雇用者一人あたりの報酬」が2004〜14年の10年間で18万7千円も減少【表3-2】しているなかで、東日本大震災の復興事業をとおして「企業所得」だけが1.55倍(7,268億円の増)と急増しているのです。【表3-2参照】
ここで注意する必要があることは、建設業の総生産が地元業者を潤すものとなっていないことです。
「四、市町村内総生産の特徴について」のなかで、建設業が大震災前の7倍、8倍となっている自治体がありましたが、統計の取り方として地元業者の積み上げによって総生産額が算出されていないのです。
「県民経済生産の推計方法」によると、「建築工事・土木工事」は、「①産出額=全国建設投資額╳出来高ベース工事高比率+自社開発ソフトウェア」となっていて、主に国土交通省の資料により算出され、自治体別に割り振られています。
防潮堤や災害公営住宅などで、大手ゼネコンが受注し、下請け系列に仕事が回る仕組みです。
塩窯市内の建設業者の聞き取りでも、「ほとんど仕事が回ってこない」というのが実態としてあります。
建設業の総生産の数値が上がっても、そのことが、地域経済を潤すことになっていないこと、企業所得も県民所得の一部として県民の財産ですが、それが、大手ゼネコンに吸い上げられたとしたら、地域経済は良くなりません。
このことも重要な課題だと思います。
『河北新報』が、「「みやぎ考―17宮城知事選」という連載(2017.5.22から)をおこないましたが、そのなかで、人口問題を中心に「加速する仙台一極集中」「地方過疎化」を告発しています。
また、「『県土の均衡ある発展』。県政運営の基軸にあった理念は、風前のともしびになりつつある」と指摘。
「地域経済は誘致企業に依存し、地場産業の衰退が進む」――まさに、「そのとおり」と思います。
今回のレポートでも、そのことは明確にあらわれていると思います。
いま、各自治体は、地域経済政策をたてることができなくなっています。
「企業誘致」はどこの自治体でも首長さんの口からすぐでてくるのですが、それ以外がないのです。
レポート「二、事業所と従業者の大移動」にまとめたように、津波被害の沿岸部だけでなく、内陸部の自治体でも企業が減少しています。
〝製造業が撤退したとき、農業は半減していた〟――こうした自治体の例もありました。
「トヨタが誘致された大衡村は豊かになったのか」に挑戦してみましたが、企業所得は増えても就業者の所得は増えず、「村民一人当たりの所得」が「県内一」でも企業所得が49%も占める(県平均31%)。
企業誘致は、雇用の拡大、地域の活気を生み出しますが、それは地場産業の振興と一体にすすめられてこその話です。
地場産業を放置して、誘致企業頼みでは、地域経済は良くなりません。
いま、地域で活動している産業を育成してこそ、未来があります。そうした自治体は全国にあります。
政策の転換を強く求めたいと思います。
最後に、今年度末に「2015年国勢調査」が出されます。
格差が拡大している宮城県の実態を正確につかむこと、とくに、東日本大震災から4年後の2015年がどう変化しているのかを正確につかむことが、今後の政策活動のうえでも重要になると思います。